がん治療
日本のがん治療
2021年4月国立がんセンターの発表によると、日本におけるがん患者の5年生存率は68.8%であり、米国を抜いて世界一の水準になりました。2022年6月に承認された世界初の主要溶解性ウイルス療法をはじめ、陽子線治療、重粒子線治療、光免疫治療など、日本の新しいがん治療技術は国際的に注目を集めています。

粒子線治療(陽子線治療・重粒子線治療)
放射線治療は、がんの患者さんの延命や痛みの症状緩和、神経麻痺の予防などの緩和的な治療法として広く行われており、近年では照射技術の高度化によって、様々ながんに対して、切除に匹敵する根治療法としても用いられるようになってきました。
また日本では、放射線治療の他にも、質量を持つ陽子や炭素イオンなどの荷電粒子(イオン)を用いた粒子線治療が古くから行われてきました。一般的に、陽子を使う粒子線治療を「陽子線治療」、炭素イオンを使用する粒子線治療を「重粒子線治療」と言います。

粒子線治療の適応疾患
粒子線治療は長らく「先進医療」という枠組みで扱われ、なかなか保険が認められてきませんでした。ところが2016年に前立腺がんや骨軟部腫瘍に対して保険が認められたのを皮切りに、2022年10月現在、様々な疾患に対する粒子線治療が保険収載されています。
粒子線治療の適応は進行しているがんのステージや位置、種類、患者の健康状態など、多くの要因に基づいて医師によって判断されます。

粒子線治療の特徴

陽子線や重粒子線などの粒子線は、体内の一定深度で停止する特性を持ち、その深さは粒子線の速度を変えることで制御できます。粒子線は停止する直前に細胞に最大の効果を与えるため、腫瘍組織に対して線量集中性の高い治療を行うことができます。
X線にはこのような特性がなく、ゆっくりと減衰しながら体を突き抜けていくため、その通過領域の全体に影響を与えてしまいます。X線では、がん組織の周囲の正常組織を被曝から守ろうとすると、多方向から照射しなければなりませんが、粒子線では少ない方向からの照射で正常組織を守ることができます。したがって、周囲を正常組織に取り囲まれた体の深部の腫瘍や、少ない放射線でも副作用が出てしまうような部位では、粒子線治療の方が副作用を抑えつつ高い治療効果を得ることができます。

陽子線治療と重粒子線治療の使い分け
基本的に、陽子線治療と重粒子線治療に治療効果、生存率の違いは認められていません。
がん治療においては、陽子線も重粒子線も、それぞれの原子核を加速させて患部に照射します。粒子線は、身体の中に入って止まるときに大きなエネルギーを発生させ、がん細胞を破壊します。

実際の治療においては、同じ臓器の腫瘍でも、消化管(胃や十二指腸、大腸など)や脳脊髄、神経など、被曝しすぎると重篤な副作用が出現する正常臓器に近い場合には、陽子線よりも重粒子線の方が、急峻なBragg-peakを利用してギリギリまでの強い照射が可能です。図6に実際に腫瘍(肝細胞がん)が十二指腸に接している場合の線量分布図を示します。陽子線(図の下側)よりも重粒子線(図の上側)の方が良い線量分布が得られたため、この患者さんは重粒子線で治療を行いました。具体的には、腫瘍辺縁と正常臓器の距離が約5mm以下の場合には重粒子線の方が良いと考えています。

治療の流れ
1. 医療コーディネート事業者へ問合せ
医療コーディネート事業者に問合せし、現状の病状、これまでの医療情報(レポートや画像)、希望する医療機関、予算、来日希望時期などの情報を伝えましょう。
2. 医療機関との調整
医療コーディネート事業者が渡航先となる医療機関へ問合せをし、受入可否の判断、治療内容、期間、費用などの詳細情報をお伝えします。
※医療機関への問合せ自体が、セカンドオピニオンとして有料となる場合もございます。
3. 概算費用の前払い
原則、医療機関への治療費の支払いは国際メディカル・コーディネート事業者に前払いします。
なお、実際の治療費が概算治療費より少ない場合は、差額分は返金されます。逆に、実際の治療費が概算治療費よりも多い場合は、差額分を日本にいる間に追加で支払う必要があります。
4. ビザの手配
治療目的で日本へ入国する時には、必ずビザが必要です。ビザがない場合には、医療コーディネート事業者が医療滞在ビザの取得をサポートします。
1. 空港での迎え:
医療コーディネート事業者が送迎等の必要なサポートを手配することができます。
2. 治療
日本の医療機関で治療が開始します。なら、治療の際は医療通訳者も同行します。入院時のサポートも医療コーディネート事業者や医療機関が行うため、付き添いは最小限の人数で構いません。
1. 治療費の算出
渡航前に国際メディカル・コーディネート事業者に前払いした概算治療費を基に、治療後に、実際にかかった費用を精算します。そのため、通常の場合、医療機関での支払いは不要です。なおこの費用には、病院での検査や治療にかかった費用だけでなく、通訳や翻訳などの費用も含まれます。
2. 定期検査
治療後のフォローアップは、自国の主治医に適切に行ってもらう必要があります。その上で、医療コーディネート事業者に定期的に病状や検査結果を送って、日本の病院でも確認してもらいましょう。
Q&A
よくいただくご質問
- 日本で治療を受けるメリットは何ですか?
-
日本では、高い専門知識・技能を持つ医療スタッフが治療の前後を含めて連携し、最先端の医療サービスを提供しています。
- 病気を抱えていても、日本へ渡航して治療を受けることができますか?
-
これまでも多くの患者の方々が日本へ渡航し、治療を受けられています。
実際に日本への医療渡航を経験した患者の方々からは、飛行機だけでなく船での渡航も可能であること・移動にかかる時間や費用が少ないことから、日本は渡航しやすい国として挙げられています。 - 日本語ができなくても、安心して日本で医療を受けられますか?
-
患者の方々のニーズに合わせて、治療・滞在をサポートする体制を整えることができるため、言語面を含めて安心して滞在することが可能です。
例えば、渡航の際には、弊社のコンサルタントが、空港での送迎・ホテルチェックインサポート・病院への送迎などをアレンジすることができます。治療の際には、医療通訳を手配し、病院内で必要な通訳を提供することも可能です。 - 医療滞在ビザ手続きをはじめとする渡航準備にはどれくらいの時間がかかりますか?
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医療滞在ビザ手続きや医療機関の受入準備の観点から、渡航準備はおよそ1~2カ月の想定が必要です。医療機関の受入判断に向けた医療情報の提供や、医療ビザ申請についても、弊社でサポートいたします。
免疫治療
がんの治療法としてよく知られているのは、手術療法、放射線療法、化学療法の3つです(がんの3大治療法)これらの治療法の他に、第4の治療方法として免疫療法があり、近年研究が進められており注目を集めています。免疫療法とは、治療を受ける方の体に元々備わっている免疫細胞を利用して、がんを治療する方法です。
免疫治療で期待できる効果
3大治療法で
対応できない
がんへの効果
全身に転移したがんは手術や放射線治療ができない場合がある。免疫療法は、がん細胞の発生箇所や進行度に関係なく治療ができる
3大治療法との
併用による
より高い治療効果
手術療法や放射線療法、薬物療法(抗がん剤治療)といった従来のがん治療の方法と組み合わせることで、より高い効果が期待できる
再発や
転移を
予防する効果
体内に残った小さいがん細胞を攻撃し、がんの再発防止が期待できる。また全身に効果が及ぶため転移したがんにも有効である
今、日本で一番注目されている免疫療法は、
NKT細胞免疫療法です。
NKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)とは・・・
T細胞、B細胞、NK細胞に続く第4のリンパ球です。NK細胞とT細胞の特徴を併せ持つ性質があることが、名前の由来です。NKT細胞は、強力な免疫反応増強作用を有し、がん細胞を直接的に殺す働きとIFN-γ産生により、免疫系を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮します
NKT標準的治療の利点

NKT細胞標的治療は、長期間にわたりがんへの攻撃担当細胞(T細胞とNK細胞)を活性化し、免疫細胞による持続的ながん攻撃を可能とする治療法です。

NKT細胞標的治療は非小細胞肺がんと頭頸部がんを対象とした臨床試験における良好な治療成績から先進医療になった実績のある免疫細胞療法です。

他の免疫細胞療法同様、副作用は、ほどんどなく安心して受けられる治療法です。

NKT細胞標的治療は、1コース4~8回の治療を初回投与から2-4ヵ月の期間で行います。治療自体は点滴又は皮下注射で行うため、日帰りの通院治療となります。
治療実績
NKT 細胞標的治療はすでに大学等の研究機関で臨床試験が行われ、進行性肺癌や頭頸部癌に十分な効果を示唆する結果が発表されています。
NKT細胞標的治療の臨床試験では、ステージⅣ肺癌患者17名のうち、10名の平均生存率は30ヶ月で優位な延長が見られた。

